『ギミー・デンジャー』実在のミュージシャンを描いた傑作5選

『ギミー・デンジャー』実在のミュージシャンを描いた傑作5選

鬼才ジム・ジャームッシュ監督が、伝説のバンド「ザ・ストゥージズ」の軌跡を辿るドキュメンタリー『ギミー・デンジャー』が、9月2日より全国順次公開される。ストゥージズのリーダー、イギー・ポップと長年のバンドファンであるジャームッシュのコラボレーションは必見。 今回は、実在のミュージシャンを描いた作品をいくつか紹介します。


制作期間中、メンバーの3人が逝去した『ギミー・デンジャー』

『ギミー・デンジャー』(C) 2016 Low Mind Films Inc

セレモニーに参加した(左から)イギー・ポップ、マドンナ、ジャスティン・ティンバーレイク -(C) Reuters/AFLO

「ザ・ストゥージズ」は、アメリカ・ミシガンにて1967年に結成され、1974年に解散した伝説のロックバンドだ。シンプルなコードを攻撃的にかき鳴らすガレージ・ロックの音楽性と、リーダーであるヴォーカルのイギー・ポップの奇特なパフォーマンス。この短い期間に彼らが遺したロックは後年、パンク、オルタナティブの元祖として、数多くのミュージシャンに影響を与えた。

ジム・ジャームッシュ監督/『Only Lovers Left Alive』 in 第66回カンヌ国際映画祭 -(C) Getty Images

長年の熱烈なファンであるジム・ジャームッシュ監督は、イギー・ポップとも旧知の仲で、1995年の『デッドマン』、2003年の『コーヒー&シガレッツ』の両作品で、イギーを俳優として起用している。
今回の『ギミー・デンジャー』の製作は、イギーの要望により実現したが、まるでイギーがそれを予知していたかのように、製作開始から公開までの期間、実に3人のメンバーが相次いでこの世を去った。

たった1年の在籍で伝説となったベーシストと恋人『シド・アンド・ナンシー』

1977年、後にパンク・ロックの代名詞となるセックス・ピストルズは、元々熱狂的なファンであったシド・ヴィシャスをベーシストとして加入させる。翌年の1978年に事実上の解散を迎えるまでのわずか1年余りで、シドは天性のスター性を発揮し、ピストルズの人気を牽引した。
なお、シドは加入時、ベースをろくに弾けなかったという。
バンド解散後シドは、恋人ナンシーが謎の死を遂げてからわずか数か月後、後を追うように麻薬の過剰摂取により死亡した。享年21歳だった。

『シド・アンド・ナンシー』30周年デジタル・リマスター版(C)2016 Chip Baker Films

そんなシドとナンシーの、まさに一瞬の生涯を切り取って映画化したのが、1986年の『シド・アンド・ナンシー』。ドラッグとロックンロールに溺れながら生き急いだシドが憑依したかのような演技で注目されたのは、シドの実家に通い詰めて事前準備に励んだという若干27歳のゲイリー・オールドマン。シドの破天荒な実生活も含め賛否両論の本作だが、この類まれなスターのアイコンとなったことは間違いない。

時代の寵児は何故死んだのか『ソークト・イン・ブリーチ~カート・コバーン死の疑惑~』

『ソークト・イン・ブリーチ~カート・コバーン死の疑惑~』 -(C)2015 Suburban Hitchhiker, LLC All Rights Reserved.

1994年、カート・コバーンは、わずか27歳の若さでこの世を去った。シアトル発グランジ・ロックの世界的ムーブメントを引き起こし、ロック史の流れを変えたとまで評されるバンド、ニルヴァーナを率いたカリスマミュージシャンである。
彼は薬物過剰摂取の末にショットガンで頭を撃ち抜いており、警察は自殺と断定。全世界に衝撃を与えた。

『ソークト・イン・ブリーチ~カート・コバーン死の疑惑~』 -(C)2015 Suburban Hitchhiker, LLC All Rights Reserved.

しかしその後も、コバーンの妻コートニー・ラヴにより、コバーン死亡前という奇妙なタイミングで当時雇われていた私立探偵は、死の真相について20年間、執念の捜査を続けていた。その執念の集大成とも言うべきドキュメンタリー・ドラマが『ソークト・イン・ブリーチ~カート・コバーン死の疑惑~』である。
もはやタブーと化している、カートの死。その真相は、本作を観たものしかわからない。

あの名曲はこうして生まれた『ジャージー・ボーイズ』

(c) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT 『ジャージー・ボーイズ』オリジナル・サウンド・トラック(国内盤)

1960年代、ハイトーンが美しいシンガー、フランキー・ヴァリを擁する4人組ポップス・グループのフォー・シーズンズは、キャッチーな名曲の数々で名声を得るが、成功の裏には様々なドラマがあった。
時を経て2005年、当時のメンバーも製作に参加し、フォー・シーズンズの結成から成功、解散に至るまでの軌跡をブロードウェイ・ミュージカルとして蘇らせ、トニー賞4部門受賞に輝いた。

『ジャージー・ボーイズ』 -(C) 2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC ENTERTAINMENT

同ミュージカルに感銘を受けたクリント・イーストウッドは、映画化を決意。こうして彼のメガホンによる傑作ミュージカル・ドラマ『ジャージー・ボーイズ』は完成した。
舞台でも主役を演じたフランキー・ヴァリ役ジョン・ロイド・ヤングの見事な歌唱もさることながら、誰もが一度は耳にした名曲の数々の誕生背景を、優れた構成で描いている。ラスト近く、オーケストレーションと共に熱唱する「君の瞳に恋してる」には涙を禁じ得ない。

生ける伝説はどこへ行くのか『アイム・ノット・ゼア』

ボブ・ディラン-(C)Getty Images

1962年のデビュー以来、ギターを片手に常に時代の代弁者として半世紀以上メッセージを発信し続けている、文字通り“生ける伝説”のミュージシャンであるボブ・ディラン。76歳となった今でも、精力的にライブを行っており、また2016年のノーベル平和賞の授与決定のニュースも記憶に新しい。

『アイム・ノット・ゼア』 (C)- 2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos-Jonathan Wenk

そんな彼の激動の半生を、クリスチャン・ベイル、ヒース・レジャー、リチャード・ギアをはじめ6人の出演者たちが、ディランの6つの人格を時代別に演じ分けるという構成で映画化した『アイム・ノット・ゼア』。時代と共に変化し続けながら、自分を維持し続けてきたディランを、あえてカテゴライズせずに観客に提示しており、トッド・ヘインズ監督の実験性あふれる手法は見事に成功している。

映画館をライブステージに仕立てた『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』

『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』 -(C) 2013 Hit the Lights,Inc.-All rights reserved.

結成から36年経つ今でも、ヘヴィ・メタルを牽引し続けるモンスター・バンド、メタリカ。実在するどころか未だに世界トップクラスのライブ動員数を誇る彼らは、自分たちの主戦場である「ライブステージ」と映画館を融合したとてつもない作品を創り上げてしまった。『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』である。

『メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー』-(C) 2013 HIT THE LIGHTS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

きっと彼らは、自分たちの魅力を最も発揮出来る場所とその体験を、映画に記すことにより永遠に残したかったのだろう。巨大なステージセットで爆音を轟かせる90分間と、メタリカからある重要な任務を命じられたデイン・デハーン扮する主人公の姿がクロスし、怒涛のクライマックスへと突入する。恐らく今後、ここまでの映像体験を提供出来るバンドはもう現れないだろう。

ジャームッシュ監督のもうひとつの贈り物『パターソン』

『パターソン』 (C)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

補足だが『ギミー・デンジャー』と共に、この夏ジャームッシュ監督からもう一作贈り物がある。8月26日公開の『パターソン』は、打って変わって何気ない日常を淡々と切り取る、アダム・ドライバー主演のドラマ。2作揃って、劇場でジャームッシュの世界を存分に堪能しよう。

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