有名歌手のビデオ監督も努めた”若き天才”グザヴィエ・ドラン
『たかが世界の終わり』メイキング(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual
グザヴィエ・ドランは1989年(平成元年)生まれ。カナダ出身の俳優兼映画監督です。彼の父も俳優で、幼少期より映画やテレビ番組に出演しています。グザヴィエ・ドラン自身も、6歳の頃から映画だけでなく、ドラマやCMにも出演するほどの人気子役だったのです。あの『サウス・パーク』のスタンをフランス語で吹き替えを担当しているのもグザヴィエ・ドランなんだとか。また、英国のシンガーソングライターであるアデルの楽曲、『Hello』のミュージックビデオ監督を務めたことでも知られています。アデルから直接オファーされたそうです。
『たかが世界の終わり』(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual
『マイ・マザー』(09)は、グザヴィエ・ドランが17歳のときの脚本を描いたものを、自身で監督・主演も務めた初めての作品。第62回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に選ばれ、長い間映画界に若い才能がいなかったことも手伝って、大きく注目されるようになりました。
以降、グザヴィエ・ドランの作品は発表されるごとに映画界で評価を得るようになり、『トム・アット・ザ・ファーム』(13)では第70回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で上映され、『たかが世界の終わり』は第69回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得しました。
”不完全さ”=人の魅力をどう表現するか
『たかが世界の終わり』(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual
「人物を魅力的にするのは不完全さだと思う。だから僕は意地の悪い人にも、魅力を感じることがある。本作の登場人物たちには、わかりやすい人は1人もいない。弱いし傷つきやすい。大きな苦悩を抱えて生きている。」とコメントするように人間の愛や憎しみなど、誰もが感じたことのある心情を丁寧に描くことが上手いドラン。
『たかが世界の終わり』(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual
本作では主人公を演じたギャスパー・ウリエルは「“沈黙を通して最大限のことを伝える“ということが、俳優としてとてもチャレンジでした」と話し、ドランとの共同作業において、”沈黙”がどれほどの可能性を持っている表現方法なのか”と二人で探っていったとのこと。ドランと共演者との濃密な映画作りがわかります。
グザヴィエ・ドランが手掛けた印象深い作品たち
『わたしはロランス』
ここからは、グザヴィエ・ドランの手掛ける作品を見ていきましょう。日本公開時も鮮烈な印象を残し、。社会や周囲の偏見に果敢に挑む二人の美して切ない愛を描いた『わたしはロランス』や、ドランが19歳の時に映画監督・脚本家デビューを果たした『マイ・マザー』などを紹介していきます。
①グザヴィエ・ドランの監督デビュー作『マイ・マザー』
『マイ・マザー』監督・脚本・主演
カナダ・ケベック州の町に暮らす17歳のユベール(グザヴィエ・ドラン)。彼には口やかましく趣味の悪い母親がおり、そんな母を受け入れようとユベールは努力するもうまくいきません。幼い頃はあんなに大好きだった母親なのに、どうしても受け入れられない自分にも苛立ってしまうユベール。そんなある日、ユベールは川沿いで夕日の下にたたずむ母親の姿を偶然見つけますが…。
『グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル』 (C)2016 Tangaro ーShoot again productions ー MK2 ー Sons of Manual ー Metafilms
グザヴィエ・ドランが弱冠19歳にして、自ら主演を務めるだけでなく監督にも挑んだ『マイ・マザー』グザヴィエ・ドランの半自伝的な内容となっており、母との関係性が上手くいかず葛藤する様は、第62回カンヌ映画祭監督週間に出品されるなど高い評価を得ました。
以後、グザヴィエ・ドランの作品では『Mommy/マミー』や『たかが世界の終わり』など、
母と息子の関係を描く作品が続きます。
②揺れる三角関係…?『胸騒ぎの恋人』
『胸騒ぎの恋人』 (C)2010 MIFILIFILMS INC
ゲイのフランシスとストレートのマリーは、まるで姉弟ように仲が良い親友。しかし、2人は参加したパーティで出会った青年・ニコラに揃って一目惚れしてしまいます。2人はニコラと親しくなるも、積極的なマリーに対し、フランシスは彼女に気を使ってどこか遠慮がち。そんな中3人で出かけた旅行先で、マリーはニコラと楽しげに戯れるフランシスに激しく嫉妬し、ついにはフランシスと取っ組み合いの喧嘩にまで発展してしまいます。その様子を目にしたニコラは、この事件以降、2人と距離を置くようになっていまい…。
『グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル』 (C)2016 Tangaro ーShoot again productions ー MK2 ー Sons of Manual ー Metafilms
『マイ・マザー』で監督・脚本・主演を務めたグザヴィエ・ドランが、次に手がけたのは親友同士も含めた三角関係の『胸騒ぎの恋人』です。フランシスとマリーが出会うある男性に『グッバイ・ゴダール!』でゴダール役を演じたルイ・ガレルも出演してます。グザヴィエ・ドランは主人公フランシスを演じました。
③もしも恋人が「異性になりたい」と言ったら…『わたしはロランス』
『グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル』 (C)2016 Tangaro ーShoot again productions ー MK2 ー Sons of Manual ー Metafilms
モントリオール在住の男性国語教師ロランスには、ある夢がありました。それは「女になりたい」というもの。ロランスは勇気を出して恋人のフレッドにと打ち明けると、それを聞いたフレッドはロランスを激しく非難します。それでもフレッドは、ロランスの想いをのんで彼の理解者であり続けることを決めます。しかし女性になることを決めたロランスの前に、偏見や社会の冷たい態度が立ちふさがります。果たしてロランスたちの運命は…?
『たかが世界の終わり』(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual
グザヴィエ・ドランが23歳の時に監督した、女性になりたい男性とその恋人の愛を10年間描いた大作です。フレッド役を演じたスザンヌ・クレマンが、その演技を評価されカンヌ国際映画祭ある視点部門で最優秀女優賞に輝くなど、グザヴィエ・ドランの手腕も世界に広まったキッカケとなる作品でもあります。
④グザヴィエ・ドランの異色作『トム・アット・ザ・ファーム』
グザヴィエ・ドラン特集開催!『たかが世界の終わり』公開記念に一挙上映