『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は史実に基づいた物語
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 (C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
昨年末12月22日に全米9館で限定先行公開された本作品は一館当たり58,446ドルという歴代最高の売り上げを記録。たった9館で一週間に5000万円を超える興行成績ですから驚きの数字ですね。日本では来る3月30日に公開のトランプ大統領の就任直後に制作が発表された社会派映画『ペンタゴン・ペーパーズ』をご紹介します。
■気になるあらすじは?
1971年のアメリカ。長年続き日々泥濘化するベトナム戦争はアメリカに暗い影を落としていた。そんな中ニューヨークタイムズの記者がアメリカ国防総省によるベトナム戦争についての極秘文書をスクープ。ペンタゴン・ペーパーズと呼ばれたその資料はベトナム戦争についての詳細な分析と見通しが記されたものであり、国の最重要機密といえる資料だったため政府はスクープの差し止めを求めて裁判を起こします。ワシントンポストの発行人であるキャサリン・グラハムはタイムズと共同して報道の自由を守るために政府と戦う決心をする。
■『ペンタゴン/ペーパーズ/最高機密文書』の前評判は?
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
スピルバーグ監督が脚本を読み、間髪入れずに、当時制作中の映画を差し置いて先に制作すると発表したために注目度の高い作品でした。公開前の2017年11月28日にはナショナル・ボード・オブ・レビュー賞(米国映画批評会議賞)を主演男優・女優の両部門で受賞してさらに話題に。現時点で海外の映画批評サイトIMDBでは約1万件のレビューが寄せられておりアベレージは7.5点と高評価。期待を裏切らない作品と言えそうですね。
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』はキャストが豪華!
© Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
『ペンタゴン・ペーパーズ』の一番の魅力はその豪華なキャスト陣です。オスカー戦線有力候補のキャストをご紹介します。
■主演はハリウッドの女王メリル・ストリープ
© Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
主役のワシントン・ポストの発行人キャサリン・グラハムを演じるのはメリル・ストリープ。昨年のゴールデングローブ賞の授賞式では明言こそ避けたもののトランプ大統領を非難するスピーチをしたことでも有名です。気骨のある女性役はピッタリでしょう。
『イントゥ・ザ・ウッズ』MovieNEX ー(C)2015 Disney
名作への出演が多いメリル・ストリープ。最近では『プラダを着た悪魔』(2006年)が人気評価共に高いですね。最近では画像のような老婆の役もよく演じられています。『ダウト〜あるカトリック学校で〜』(2010年)での校長先生の役も良いのでお勧めです。
メリル・ストリープ&アマンダ・セイフライド-(C)Getty Images
公開待機作としてはコメディ・ミュージカル映画『マンマ・ミーア!』(2010年)の続編が予定されています。こちらはABBAの楽曲がふんだんに使用されておりイギリスで大ヒットしました。
■サポート役は円熟味十分!トム・ハンクス
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
キャサリンを支えるワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリーを演じるのはトム・ハンクス。コメディアンとしてキャリアを開始して38年でゴールデングローブ賞・アカデミー賞あわせて12回ノミネート受賞が6回。ハリウッドを代表する名アクターですね。
『ブリッジ・オブ・スパイ』日本オリジナルポスター -(C) Twentieth Century Fox Film Corporation and DreamWorks II Distribution Co., LLC. Not for sale or duplication.
スピルバーグ監督作品には今作を含めて5作で出演しています。気心のしれた名タッグといえますね。最近では『ブリッジ・オブ・スパイ』で一緒に仕事をしています。こちらでは憲法の精神を守る信念の弁護士役でした。
『ザ・サークル』ティザービジュアル (C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.
最近では話題の『ザ・サークル』にも出演。今大人気のエマ・ワトソンと共演しています。ちょっと常識外れのキャラクターをこの映画では演じています。彼の経歴では珍しい役柄なのでそういった意味でも注目ですね。
■テレビドラマの女王サラ・ポールソンも出演
サラ・ポールソン-(C)Getty Images
『ペンタゴン・ペーパーズ』の注目キャストといえばサラ・ポールソンも忘れてはいけません。1974年生まれ。女優としては90年代の初頭から活躍し『カーラの結婚宣言』や『ハート・オブ・ウーマン』などに出演している女優ですが、基本的にはテレビドラマの女優として活躍しておりエミー賞に6度ノミネートされた名女優です。(受賞は1回)
©Warner Bros. Entertainment Inc - U.S., Canada, Bahamas & Bermuda. ©2007 Village Roadshow Films (BVI) Limited - All Other Territories
公開待機作の『オーシャンズ11』シリーズの新作。ベテランながらいろいろと挑戦されているようです。本格的に映画にも活躍の場を広げるのかもしれないですね。
制作陣にレジェンド・タッグが再び!
■監督はスピルバーグ!
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』ワールドプレミア(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
監督は世界一の映画監督スティーブン・スピルバーグ。ハリウッドにおける生涯監督作品興行収入1位を誇るヒット・メイカーにして映画界の至宝。熱心な民主党支持者ではありますが、反面自身の作品は(社会派映画が多いわりには)政治批判はされておらず、それだけに今回の作品には彼の本気度が垣間見えます。
『レディ・プレイヤー・ワン』(原題) (C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED
公開を『ペンタゴン・ペーパーズ』に抜かされてしまった『レディ・プレイヤー1』仮想現実をテーマにした映画でガンダムやキング・コングが出てくるそうです。監督はゲームマニアとしても有名ですから楽しみですね。
ハリソンフォード&ジョージ・ルーカス-(C)Getty Images
他にも『インディ・ジョーンズ』の最新作を盟友ルーカスとともに制作することも発表されています。ハリソン・フォードも当然ながら出演するようで、70歳をこえてまだまだ衰えず、といったところでしょうか。
■音楽は生きるレジェンド!ジョン・ウィリアムズ
『スター・ウォーズ』 -(C) Getty Images
スピルバーグ映画音楽といえばジョン・ウィリアムズ。アメリカで行われた三回のオリンピックで楽曲を提供し、アカデミー賞音楽部門へのノミネートは驚きの47回と最多。御年85歳ながらもこの5年で5本の映画に楽曲を提供している。特に有名な曲だけでも『ジョーズ』『スター・ウォーズ』『スーパーマン』『インディ・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『ハリー・ポッター』など。
『すばらしき映画音楽たち』(C)2017 Epicleff Media. All rights reserved.
画像の『すばらしき映画音楽たち』(2017年)ではジョン・ウィリアムズの仕事の様子も観られます。映画ファン必見の作品ですよ。
『ペンタゴン/ペーパーズ/最高蜜文書』ネタバレ情報!?
■史実としてのペンタゴン・ペーパーズ
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 (C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
ここからはネタバレを含む内容になります。ご注意ください。
ペンタゴン・ペーパーズの著者の一人がニューヨーク・タイムズの記者に内容をリークしたことにより、文書の存在が明らかになる報道がはじまると、当時の大統領であるニクソンは司法省を通じて記事の掲載差し止めを請求。連邦最高裁判所での上告審まで裁判はもつれましたが「政府の説明責任に対する不作為」が認められ訴えは棄却されます。本作におけるキャサリン・グラハムはワシントンポストの発行人の立場から報道の自由を守るためにタイムズと共同。この情報漏洩を問題視した政府が秘密裏に工作チーム”鉛管工”(プラマー)を結成したことで後の「ウォーター・ゲート事件」に繋がります。報道の自由に対するアメリカの闘争の第一歩となった事件といえます。
■『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のトリビアは?
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』ワールドプレミア(C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
本作の主人公キャサリン・グラハムは後にメディア界の女王と呼ばれた人物。連邦準備制度理事会の議長を務め、後の初代世界銀行の初代総裁となるユージン・メイヤーの娘として生まれました。物静かなお嬢様とされていましたが、父から会社を引き継いでいた夫の死によりワシントン・ポストの代表となると、本領を発揮。今作でのペンタゴン・ペーパーズ事件からウォーター・ゲート事件で政府と戦う姿勢を一貫し、ワシントンポストを最大の新聞社とすることに成功しました。かつては日本の首相さえも彼女の機嫌を無視できない。といわれたほどの人物。ただし権勢とは別に彼女自身は非常に親しみやすい人物で公明正大で誰に対しても平等な人柄で多くの人に慕われていたそうです。
ジャーナリスト映画に外れなし!?おすすめジャーナリスト映画
■『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年)
『スポットライト 世紀のスクープ』本ポスター (C)2015 SPOTLIGHT FILM, LLC
ジャーナリスト映画といえば最近ではやはりこの作品が一番でしょう。カトリック司祭による児童への性的虐待事件を扱い、世間の批判にさらされながらも報道を続ける記者たちの姿勢が描かれた名作。アカデミー賞作品賞と脚本賞を受賞しました。
■『ナイトクローラー』(2014年)
ジェイク・ギレンホール主演『ナイトクローラー』ポスタービジュアル ー(C)2013 BOLD FILMS PRODUCITONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ダン・ギルロイ監督による病質的なジャーナリストを描いた作品。制作費850万ドルと低予算映画の中でも低い金額で作られた作品ながら批評家から絶賛され、海外の映画サイトIMDBでは36000件の評価が寄せられアベレージで7.9点と高評価を得ています。
■『大統領の陰謀』(1976年)
ロバート・レッドフォード(C)Getty Images
ペンタゴン・ペーパーズ事件の余波ともいえるウォーター・ゲート事件を描いた作品。『ペンタゴン・ペーパーズ』でトム・ハンクスが演じる編集主幹のベン・ブラッドリーも出てきます。ジャーナリスト映画の代名詞的な作品。こちらの作品と『フロスト×ニクソン』(2008年)を併せて鑑賞すると一連の流れがよくわかります。若かりし日のロバート・レッドフォードがカッコいいです。
まとめ
メリル・ストリープ&トム・ハンクス&スティーブン・スピルバーグ-(C)Getty Images
さてさて『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を紹介しました!アメリカの今を学ぶ映画としても演技を楽しむ映画としても期待できそうです。公開は少し先ですが楽しみに待ちましょう。