『PAN ネバーランド、夢のはじまり』
2018年2月16日の「金曜ロードショー」で『PAN ネバーランド、夢のはじまり』が放映されました。
ジェームズ・マシュー・バリーの戯曲『ピーター・パン』をもとに作られた新たなパンの物語を地上波で見られるのです。
そこで今回は、『PAN ネバーランド、夢のはじまり』に登場する主要キャラクターとストーリーを絡めて、ファンタジーの持つ力とリアリズムについて考えることで、より深くピーター・パンの物語を楽しめるようにしていきたいと思います。
『PAN ネバーランド、夢のはじまり』のあらすじ
『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』 (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
『PAN ネバーランド、夢のはじまり』の舞台は第二次政界大戦下のロンドン。母親であるメアリーに捨てられたピーターは孤児となってしまい、孤児院で幼年時代を過ごすことになります。
ピーターが住んでいる孤児院で、夜な夜な子供たちが失踪する事件が発生。そこで、ピーターは連続児童失踪事件を解決しようとするのです。
そんなある日、突然空飛ぶ海賊船が登場して、ピーターはネバーランドに連れていかれてしまいます。
ネバーランドは黒髭に支配されていました。連れ去った孤児を労働力として扱う黒髭と戦うため、フックと手を組むピーター。
そして、ティンカー・ベルの預言である「言い伝えの少年」であることを証明するために空を飛ぶピーター。
フックと手を組み、黒髭と戦い、空を飛ぶ力を手に入れることで、ピーターはティンカー・ベルから「パン」の称号を得て「ピーター・パン」と呼ばれるようになります。
日本語吹き替え版の主題歌は松田聖子さんの『永遠のもっと果てまで』
日本語吹き替え版の主題歌は松田聖子さんの『永遠のもっと果てまで』。作詞は松本隆さん、作曲は呉田軽穂(松任谷由美)さん、編曲は松任谷正隆さんです。
『永遠のもっと果てまで』は松田聖子さんが洋画の主題歌に初めて提供した楽曲でもあります。
日本語吹き替え版の担当は成宮寛貴さんと水川あさみさん
水川あさみ&成宮寛貴/『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』日本語版公開アフレコ
日本語吹き替え版の担当はそれぞれ、ピーター役は山田瑛瑠(やまだるい)さん、黒髭役に内田直哉さん、フック役に成宮寛貴さん、タイガー・リリー役には水川あさみさんになります。
その中でも、タイガー・リリーの声を担当した水川あさみさんは声優初挑戦だったそうで、「ふだんのお芝居とは全然違うので、緊張しましたね。自分の声の幅を知ることができて、勉強になりました。」とインタビューで答えていました。
主人公の「ピーター」役はリーヴァイ・ミラー!!
『PAN~ネバーランド、夢のはじまり~』リーヴァイ・ミラー/photo:Naoki Kurozu
『PAN ネバーランド、夢のはじまり』で主演のピーターを演じたのはリーヴァイ・ミラー。
リーヴァイ・ミラーの誕生日は2002年9月30日で、2018年現在は16歳になります。身長は160cm。
オーストラリアで生まれたリーヴァイ・ミラーは、子供の頃から子役として活躍をしていました。2010年にオーストラリア映画『Haertbeat Away』に出演。2011年にはFOX放送のTVシリーズ『Terra Nova ~未来創世記~』に出演をしています。
そして『PAN ネバーランド、夢のはじまり』のピーター役を募集するために、世界中で行われたオーディションでリーヴァイ・ミラーは見事にピーター役を射止めました。
現在ではレイチェル・パーキンズ監督が映画化したオーストラリア文学『Jasper Jones(ジャスパー・ジョーンズ)』に出演することが決定している他、ラルフ・ローレンの15年秋冬子供キャンペーンのグローバル大使も務めています。
とにかく美少年で、今後の活躍が期待される役者の1人に目されています。
2015年のラルフ・ローレンのアンバサダーに抜擢!!
リーヴァイ・ミラー/「ラルフ ローレン チルドレンズ Fall 2015」
リーヴァイ・ミラーはラルフ・ローレンの2015年秋のチルドレンズウェアのブレンドアンバサダーに大抜擢されました。
もともとラルフ・ローレン(RALPH LAUREN)は、アメリカ合衆国出身のデザイナーの名前であり、ブランド名。
ラルフ・ローレンの特徴は、高級スーツやポロシャツを主に手掛けていて、アメリカントラディショナルを代表と言われています。
オリンピック時のアメリカ合衆国チームのユニフォームもいくつか手掛けるなど世界的に知名度があるデザイナーです。
このデザイナーに指名されたことは、アメリカントラディショナル、つまりアメリカの伝統を備えたスタイルとして認知されたことを意味します。
もともと端正な顔立ちをしているリーヴァイ・ミラーが『PAN ネバーランド、夢のはじまり』の主演をして、アメリカ人として、認知されるのも皮肉なものがあります。
それは、リーヴァイ・ミラーがオーストラリア出身だからです。現代イギリスを代表するファンタジー『ハリーポッター』シリーズを手掛けたスタジオを映画の持つ独特のユーモアが多くの人に理解されたからこそ、リーヴァイ・ミラーがアメリカトラディショナルを代表するデザインのアンバサダーに就任したのではないでしょうか。
「黒髭」役はヒュー・ジャックマン
『 P A N ~ネバーランド、夢のはじまり~』 (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ネバーランドの支配者、黒髭役を演じたのはヒュー・ジャックマン。
現代におけるオージー(オーストラリア産)俳優の代表と言えばヒュー・ジャックマンの名前をあげない人はいないでしょう。
また、アメコミを原作にした『X-MEN』シリーズで無敵の超人・ウルヴァリン役を担当して、すさまじい演技と共に高い評価を得ています。
ほぼ完全なる悪役の黒髭をヒュー・ジャックマンが担当するのは、かなりユニークで、今まではやはり『ニューヨークの恋人』ではタイムスリップした貴族を演じたり、前述した『X-MEN』では、無敵の死なない(まさに死にません)ウルヴァリンを演じたりなど、悪役を演じることは無かったようです。
そんな、正統的な二枚目であるヒュー・ジャックマンは少しひねったヒーローを今まで演じてきました。そんな俳優としてのキャリアの中で、黒髭を演じるのはかなり面白いと思います。
また、主役を演じたリーヴァイ・ミラーもオーストラリア出身の俳優なので、ヒュー・ジャックマンのような偉大な先輩と演じられるのは、とても得難い経験だと思えます。
『LOGAN/ローガン』(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation
ヒュー・ジャックマンが死なない英雄ウルヴァリンを演じている『X-MEN』シリーズは、2000年の『X-MEN』からスピンオフを含めて『LOGAN/ローガン』まで、9作品撮影されていて、現在も撮影される予定があるそう。
ファンタジーの中にしかいないヒーローを演じられる身体性こそ現代の俳優が求められる資質の一つなのかもしれません。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』でジャック・スパロウを演じたジョニー・デップしかし、『マトリックス』で救世主ネオを演じたキアヌ・リーブスしかり。
今回の映画で主演を演じたリーヴァイ・ミラーもまたその候補に挙がるかもしれません。
「タイガー・リリー」役はルーニー・マーラ
『 P A N ~ネバーランド、夢のはじまり~』 (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
タイガー・リリーを演じたのはルーニー・マーラです。
ルーニー・マーラは『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で孤高のハッカー、リズペット役を演じた女優。
また、『PAN ネバーランド、夢のはじまり』と同時期にパトリシア・ハイスミス原作のミステリー『キャロル』でテレーズ・ヴェルベット役を演じて、ケイト・ブランシェットと共演をしています。
タイガー・リリーは『キャロル』のテレーズ・ヴェルベットは全く正反対の役柄で、激しいアクションも行っています。
ファンタジー作品ならではの、絢爛豪華なファッションも魅力で、見ていて飽きることがありません。そしてやはりとても美しい女優です。
『 P A N ~ネバーランド、夢のはじまり~』 (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
今回、ルーニー・マーラがタイガー・リリーを演じるにあたり、批判や不安があったそう。それは演じるタイガー・リリーがネイティブ・アメリカンという人種だからです。
タイガー・リリーは子供向けに書くとインディアンの酋長の娘。つまり一族の姫に当たるのです。
インディアンとはネイティブ・アメリカンとも呼び習わし、アメリカ合衆国が成り立つ前にアメリカ大陸に住んでいた民俗の総称。
何故インディアンとも呼ぶのかというと、始めにインドに行く予定の船に乗った人々が、たどり着いたのがアメリカ大陸であり、インドと誤解したため生まれた言葉なのです。
さて、タイガー・リリーについてですが、実は、ピーターが悪夢の世界に入ったときにしか存在しないキャラクター。つまりインディアンの酋長の娘なのですが、実際には存在しない架空のキャラクターとして成り立つという、とても不安定な存在なのです。
白人であるルーニー・マーラがネイティブ・アメリカンのタイガー・リリーを演じることに疑念が産まれたのは、もともとキャスティングの候補に黒色人種であるルピタ・ニョンゴと白色人種アデル・エグザルホプロスの名前も挙がっていたことに繋がります。
結局白色人種のルーニー・マーラがタイガー・リリー役を射止めてしまったので、やはりハリウッドでは白色人種の方が仕事が取りやすいことに対する批判が生まれ、尚且つ現代における仕事選択の自由が生まれ辛くなる、と人種差別撤廃運動の一助にもなったと言えるでしょう。
監督のジョー・ライトによると「国際性と人種性に富んだ世界を造ろうとした」そうで、キャストが白色人種しかいないこととは全く作品の質は関係ないそうです。
ただ、「ただしハリウッドに限る」の申し訳のキャプションがついてしまうことも疑えない事実です。
「フック」役はギャレット・ヘドランド
『 P A N ~ネバーランド、夢のはじまり~』 (C)2015 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC