『万引き家族』のあらすじ
万引き家族 1枚目の写真・画像© 2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.
再開発が進むなか、ポツンと残された古い住宅街。日雇い仕事の父・治と息子の祥太“親子”ならではの連携プレーで万引きに精を出している。その帰り道、団地の廊下で凍えている幼い女の子を目にした治は思わず家に連れて帰ってしまう。突然、子どもを連れてきた夫に腹をたてる信代だったが、体じゅう傷だらけのゆりの境遇を察し、面倒をみることにした。祖母・初枝の年金を頼りに暮らすその一家は、風俗のバイトをしている信代の妹・亜紀、そして新しい家族のゆりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていた。しかし、ある事件をきっかけに家族の隠された秘密が明らかになっていく――。
『万引き家族』あらすじ・ネタバレ
『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会
ある日、一家は海に行きます。無邪気に遊ぶ家族を見ながら祖母初枝は「ありがとうございました」と呟きます。
翌日、初枝は息を引き取りました。葬式をあげることで凛のことが知られてしまうことや、葬式費用がかかってしまうこと、役所からの年金が受給できなくなることもあり、治と信代は遺体を家の床に埋めます。
『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会
それから数日後。祥太は万引きをするために凛を連れてスーパーに行きます。しかし、凛が万引きする姿を見て、とっさに店員に気付かれるようにみかんを盗み逃げ出します。店員から逃げる際に祥太は怪我を負ってしまい病院送りに。
警察に呼び出された治は、このままでは全てバレてしまうと思い信代たちを連れて夜逃げしようとします。しかし、そこに警察が現われ一家は逮捕されました。
『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会
事情聴取を受ける一家。すると次々と隠された秘密が明らかとなっていきます。
幸せそうに見えた家族でしたが、誰一人として血の繋がりがなかったのです。亜紀は家出少女、祥太はパチンコ屋の駐車場に置き去りにされていた他人の子供、治が過去に死体遺棄の罪で逮捕されていたこと。行き場を失った彼らは、名前を変えて初枝の家に転がりこんでいたのです。
全ての罪を一人でかぶった信代は、死体遺棄と祥太、凛の誘拐の罪で懲役5年が言い渡されます。
そして偽りの家族はバラバラに、祥太は施設から学校に通うことになり、凛は本当の親のもとにかえされました。
『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会
それからしばらく、信代のもとに治と祥太が面会に訪れます。
信代は祥太に「パチンコ屋の駐車場に置き去りにされていたあなたを私が拾った。車は赤のヴィッツ。本当の親が見付かるかもしれない。」と打ち明けます。
その夜、治の家に泊まった祥太は「あの日、僕を置いて逃げようとしたの?」と治に問います。
謝る治は「父ではなく、おじさんに戻るよ」と言います。
翌朝、バスに乗って施設に帰る祥太。治は祥太の名前を叫びながらバスを追いかけます。バスは止まることなく、祥太はその姿をただ黙って見つめていました。
『万引き家族』あらすじ・ネタバレ・結末
亜紀は警察から、初枝が自分の本当の親からお金をもらっていたことを知ります。孤独だった自分を迎えてくれたのは、お金のためだったのかと疑問を抱きます。
一方、親のもとに帰った凛は、相変わらず母から冷たくされています。幼稚園にも通わず、ベランダで一人で遊ぶ凛は、寂しそうな表情で外を見つめました――。
以上、『万引き家族』のあらすじ・ネタバレ・結末でした。
『万引き家族』感想
『万引き家族』(C)2018『万引き家族』 製作委員会
家族のあり方や生き方、子供の虐待や貧困からくる教育格差、年金の不正利用、DVなど、さまざまな問題を集約させている作品でした。
血の繋がりはなく、貧しくても情だけはある家族は、子供たちにとって本当の居場所だったのかもしれません。
しかし、居場所を失った彼らが、家族として一つの屋根の下で生活をシェアしている。この状態が社会から死角になっていることに恐ろしさも感じました。アウトローサイドをリアリティに描いた世界観に引き込まれていき、ラストで悲しい表情の凛が現代社会の問題を浮き彫りにしているかのようでした。
『万引き家族』家族に隠された秘密を解説
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柴田一家は祖母初枝を除き、全員が偽名を使っていました。物語の終盤から急展開し、次々と明かされていくそれぞれの秘密に混乱する方もおられると思います。
ここでは一家に隠された「秘密」と、重要な意味を持つ「名前」の由来をわかりやすく解説していきます。()内は本名となります。
■柴田治(榎勝太)
リリー・フランキー『万引き家族』/photo:You Ishii
信代と飲み屋で出会い、そこで彼女が夫からDVを受けていることを知り、二人で夫を殺害し死体を埋めます。正当防衛で殺人は不起訴となりますが、死体遺棄の罪で逮捕されます。
前科持ちとなった勝太は、正社員として雇ってもらうことができず、車上荒しをします。
いつものように車上荒しをしているところ、孤独な老婆、初枝と出会い家に招かれます。治という偽名は初枝の息子の名前です。治という偽名を名乗り、本当の息子の代わりになろうとしていたのかもしれません。
■柴田信代(田辺由布子)
安藤サクラ『万引き家族』/photo:You Ishii
田辺由布子が「信代」という偽名を名乗った理由は、勝太と同じ理由です。「信代」という名前は、初枝の息子治の奥さんの名前からとっています。
由布子は、幼少時代に母から愛されずに育ちました。「信代」と名乗り、偽りではありますが夫と義母と暮らすことで幸せな家庭を築きたかったのかもしれません。
■柴田祥太(本名不明)
城桧吏『万引き家族』/photo:Naoki Kurozu
赤ちゃんの時にパチンコ屋の駐車場に置き去りにされていたところを、車上荒しをしていた治と信代に拾われます。そのため、本当の両親や本名は誰もわかっていません。
「祥太」は治の本名である「勝太」が由来になっています。「勝太」も信代と同様に、幼少時代に親から愛されていなかったため、「祥太」を愛することで過去の自分を救おうとしていたのかもしれません。