映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその1:映画の舞台は2027年の日本
© 2016 TOHO CO.,LTD.
『シン・ゴジラ』は2016年に公開された映画ですが、実は作中の時代は公開年から11年後の2027年。その時代設定は東京駅付近に建っている三菱地所のビルでわかります。実はこのビルは2027年完成予定なので、2019年現在もまだ存在していません。
© 2016 TOHO CO.,LTD.
そしてなんと、できたての三菱地所ビルはゴジラ上陸の時に作中であっけなく破壊されてしまいます!もちろんスタッフは作中でビルを破壊することの許可を三菱地所に取りに行ったそうです。三菱地所はそれを快く了承しただけでなく、作品資料としてビルの完成予想図も提供したとのこと。
映画製作はスタッフのこだわりはもちろんですが、それに協力する人たちの力もあってこその成功だと感じるエピソードですね。
映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその2:登場人物の名前はあの名作から取られていた
(C)2016 TOHO CO.,LTD.
『シン・ゴジラ』の一部登場人物には、医療ドラマの金字塔『白い巨塔』の登場人物名がもじられて命名されています。例えば、ゴジラ対策に揺れる大河内内閣。総理大臣の大河内(大杉漣)を始め、東(柄本明)、花森(余貴美子)、柳原(矢島健一)と『白い巨塔』の人物たちと名字が一致します。
大河内内閣政治の大部分が非業の死を遂げた後、引き続き指揮を執るのは里見臨時内閣。大河内内閣で農林大臣をしていた里見(平泉成)が総理大臣となり、鵜飼(松澤仁晶)や菊川(横光克彦)も抜擢されます。余談ですが、自衛隊には仕事にベストを尽くす財前(國村隼)統合幕僚長もいます。
(C)2016 TOHO CO.,LTD.
ちなみに『白い巨塔』の大河内と里見は、不正を嫌い医療に人生を捧げる誠実な医師でした。一方『シン・ゴジラ』では、国民を思いやりながらも優柔不断さがある大河内と、飄々としたところを持つ里見というキャラクターの描き方が対照的です。
また、『白い巨塔』以外では長谷川博己演じる矢口蘭堂の「蘭堂」が庵野監督の奥様・安野モヨコ氏の『ジェリービーンズ』の登場人物・福田蘭堂から取られています。
映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその3:『シン・ゴジラ』を象徴する数字「29」
© 2016 TOHO CO.,LTD.
『シン・ゴジラ』を象徴する数字として注目されている「29」。『シン・ゴジラ』が東宝が製作したゴジラシリーズ第29作目の作品であることを指していますが、それだけではありません。『シン・ゴジラ』の公開日は2016年7月29日、シリーズ第一作目の『ゴジラ』が公開されたのは1954年(昭和29年)。『シン・ゴジラ』は『ゴジラ』の世界観を意識して作った作品ですので、これは決して偶然ではありません。
© 2016 TOHO CO.,LTD.
また、作中でゴジラが東京に上陸したルートは、戦時中にB29が爆撃のため東京に上陸した侵入ルートと同じだと言われています。
「29」という数字に注目すると、庵野監督の『ゴジラ』に対する思いや『シン・ゴジラ』に込めたこだわりが感じられますね。
映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその4:ゴジラの目は人間の目を参考にした?
© 2016 TOHO CO.,LTD.
『シン・ゴジラ』のゴジラは作中で5つの形態に変わります。特に蒲田方面を襲った第2形態は「蒲田くん」と呼ばれ、不気味な目をしているにもかかわらずネットでも人気を博しました。
今回のゴジラをデザインするにあたって、庵野監督はゴジラの「目」にこだわったそうです。作中ではまるで両生類のような生態見せるゴジラですが、参考にしたのはなんと人間の目。庵野監督は「人間の目が一番怖い」ということで、デザイン依頼を受けた造形家の竹谷隆之は黒目・白目の比率に徹底してこだわり、目を見開いた凶器を感じる第二形態のゴジラから、感情を見せない第三形態・第四形態のゴジラの目を作りだしました。
© 2016 TOHO CO.,LTD
実は本作のゴジラは、形態を変えていくごとに次第に目が小さくなっているのですが、これも「ゴジラは最強だから目は必要ない」という庵野監督の考えが反映されています。そのため、実は終盤に少しだけ登場した第五形態のゴジラには目がありません。
第五形態のゴジラは成長する前に凍結されたのですが、第四形態のゴジラとは打って変わって、まるで人間のようなシルエットと大きさが気になる存在です。人間にそっくりなのに目がない状態。これが牙を向いたら一体人類はどうなっていたのか…そんな恐怖感がこみ上げるデザインですね。
映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその5: ゴジラの皮膚はあの野菜がモデルだった⁉
(C)2016 TOHO CO.,LTD.
黒いゴツゴツとした皮膚に見え隠れする血のような赤い色。先述したデザイン担当の竹谷隆之氏はゴジラの皮膚をマグマや血をイメージして製作したそうです。確かに本作のゴジラはまるで燃え盛る火を宿したマグマのように見えますね。
それでは、皮膚の質感は岩石がイメージなのかというとそうではなく、なんと野菜のゴーヤがモデルなのだとか。
日本版『ゴジラ』最新作で描かれる、ゴジラの足型
庵野監督は、元々ゴジラの皮膚をただれているような質感でイメージしていました。竹谷氏はデザインを形にするため、自宅の庭で作ったゴーヤの型どりを庵野監督に見せると、イメージにぴったりと言われ、ゴーヤのぶつぶつとした表面がゴジラの皮膚の質感として採用されたそうです。
マグマとゴーヤー。まったく別物に感じますが、インスピレーションは意外なところから生まれるのですね。ぜひゴジラの皮膚の質感にも注目してみましょう!
映画『シン・ゴジラ』トリビアや小ネタその6:『シン・ゴジラ』は初代ゴジラへのオマージュ溢れる作品
(C)TOHO CO., LTD
『シン・ゴジラ』は原点回帰として昭和29年に公開された『ゴジラ』を意識し、オマージュがちりばめられた映画として知られています。
そのひとつがゴジラが出現した時の登場人物たちのリアクション。初代ゴジラ以降、日本で製作されたゴジラシリーズは、すでにゴジラに遭遇した後の世界を描いていました。しかし『シン・ゴジラ』ではゴジラは未知の生物として取り扱われ、作中で名前が判明する設定です。これまでのシリーズをリセットし、原点回帰であることを見せる象徴的な描写です。また、ゴジラは作品によってはこ人間側の味方になることもあり、決して悪役だけの存在ではありませんでした。
(C) TOHO CO.,LTD.
しかし、『シン・ゴジラ』では人間VSゴジラが明確に描かれています。これも人間を脅かす存在として描いた初代ゴジラの世界観をそのまま受け継いでいると言えます。
さらに、冒頭に発見される牧教授が乗っていたプレジャーボート「グローリー丸」は、初代ゴジラで最初に沈没させられる船「栄光丸」を英訳した名前。牧教授は作中行方不明ですが、ゴジラ出現に何らかの関わりがあるとみられている人物。栄光丸は作中で原因不明の沈没事故を起こし、物語の発端となります。
このような初代ゴジラへのオマージュからも、庵野監督のゴジラ映画に対する思い入れが感じられますね。