名優ジャック・ニコルソンおすすめ作品1:『カッコーの巣の上で』
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1975年に公開されたアメリカン・ニューシネマを代表する作品。監督はチェコ出身で後年『アマデウス』を手がけた名監督のミロス・フォアマンです。原作は1962年の発売以来ベストセラーを記録した同名小説ですが、映画も同様に世界的な大ヒットとなり、少しずつ認められていたジャック・ニコルソンをしっかりとスターダムへと押し上げました。撮影当時彼は38歳。下積みから努力を重ねてきた彼の努力が認められた瞬間でした。
ジャック・ニコルソンが演じるのは、未成年への婦女暴行罪で捕まった中年男R・P・マクマーフィ。強制労働を逃れるために精神病のふりをした彼は、とある精神病院へと入院することになります。気ままな入院生活を考えていた彼の期待とは裏腹に、そこは厳格なラチェッド婦長(ルイーズ・フレッチャー)が管理・統制している閉鎖的な世界でした。
息苦しさを感じたマクマーフィは、自身の自由を求めると同時に無気力になっていた患者達へも生きる気力を与えていきますが、過酷な運命が彼を待ち受けていました。
当時行われていた精神病への治療や、手術の描写がかなりショッキングなため、賛否両論を巻き起こした本作。アカデミー賞では主演男優賞と女優賞・作品賞・監督賞・脚色賞の5部門に輝きました。ニコルソンだけでなく、共演したクリストファー・ロイドやダニー・デヴィートにとっても本作が出世作となりました。そのため、『カッコーの巣の上で』は多くの名優たちの出世作としても知られています。
映画の冒頭、入院前に病院の院長と自分の精神状態について話すニコルソンの演技はアドリブなので、ぜひじっくり観ましょう。
名優ジャック・ニコルソンおすすめ作品2:『バットマン』
『アリス・イン・ワンダーランド』や『シザーハンズ』のティム・バートン監督が1989年に公開した大ヒット作。主題歌はプリンスが担当し、こちらも斬新なミュージックビデオが話題になりました。ニコルソンの役はバットマンと対立する悪役ジョーカー。その怪演は観る者をひきつけ、一躍彼の当たり役のひとつになっただけでなく、子どもという新たなファン層を獲得したと言われています。
犯罪が絶えない都市ゴッサム・シティ。住民たちは「バットマン」という一人の男の噂でもちきりでした。女性カメラマンのヴィッキー・ベール(キム・ベイシンガー)は、住民たちを悩ませる犯罪者たちを倒していく彼の実態を追いかけています。
一方、ある事件からバットマンを恨んでいるジョーカー(ジャック・ニコルソン)は、全身黒づくめで素顔を見せない彼を「小心者」と挑発し、彼をおびき出して再対決しようともくろんでいました。やがてジョーカーはヴィッキーに目をつけますが…。
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バットマンの最大の敵ジョーカー。『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーが有名ですが、実はレジャーの演じたジョーカーの原型となったのはニコルソンのジョーカーなのです。
ニコルソンが演じる前のジョーカーは、陽気さを前面に出した悪役像が一般的でした。しかし、ニコルソンはジョーカーの悪役像に暴力的でキレやすい性格をプラスします。白塗りで常に笑っているような外見に、狂気が加わったニコルソンのジョーカー像は、これまでに見られない斬新さで後世に大きな衝撃を与えました。『バットマン』を語る上でニコルソンのジョーカー像は避けて通れない影響力があります。ヒース・レジャーのジョーカーが好きな人も必見です。
名優ジャック・ニコルソンおすすめ作品3:『イージー・ライダー』
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俳優として多くの名作を残したデニス・ホッパーが監督・主演を兼任した作品。1969年に全米で公開され、アメリカン・ニューシネマを代表する作品となりました。主演はデニス・ホッパーの他にピータ・フォンダも務めました。ニコルソンは、彼らの旅に途中から加わるアル中の弁護士を演じています。
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麻薬取引で大金を得たキャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)。二人はルイジアナ州ニューオリンズで行われる謝肉祭を目指し、改造したハーレーに乗ってカリフォルニアを出発します。途中パレードに無許可で参加したため逮捕された二人。しかし、弁護士ハンセン(ニコルソン)のおかげで釈放され、旅にハンセンも加わることになりました。
きままな旅を楽しんで「自由」を体現する3人でしたが、やがて田舎へ行けば行くほど旅先の人々の空気が変わっていることに気がつきつつ無視します。強気な彼らは、思わぬ出来事に遭遇することになります。
主題歌として使用されたステッペンウルフの「ワイルドで行こう」は、現在もTV番組やCMで使われるほどあまりにも有名な曲です。ヒッピーやドラッグなどアメリカのダークな側面が描かれ、当時の世相を反映する内容になっています。ニコルソンは本作でアカデミー助演男優賞にノミネートされ、それをきっかけに徐々に注目され始めました。
名優ジャック・ニコルソンおすすめ作品4:『シャイニング』
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スティーヴン・キングの同名小説をスタンリー・キューブリック監督が映画化した作品。雪山に閉ざされたホテル・オーバールックを舞台に、狂気に取りつかれた男とその家族を描いたホラー映画です。斧を持ってドアをたたき壊すニコルソンの姿は、DVDのジャケットにも採用されているほど有名で、キューブリック監督とニコルソンの代表作としてよく知られています。
一方、登場人物の描写や展開、結末が原作とあまりにも違うため、原作者のスティーヴン・キングからはクレームがついてしまいました。キングは後年自ら映画を撮り直しをするなど話題が絶えない作品です。
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作家志望のジャック・トランス(ニコルソン)は、妻のウエンディ(シェリー・デュヴァル)と息子ダニー(ダニー・ロイド)を連れて、山奥にあるオーバールック・ホテルへとやって来ました。このホテルは大型ですが、雪深い山奥にあり冬の間は客が入らないので閉鎖するのです。ジャックは無人になったホテルの管理人をしながら投稿する作品を仕上げようと考えたのでした。
しかし、実はこのホテルは以前ジャックのように管理人を勤めた男性が斧で家族を惨殺し、自らも命を絶ったといういわくつきの場所。気にしないと言い張るジャックですが、やがて彼はホテルを取り巻く狂気に取りつかれたように奇行が目立ち始めます。一方「シャイニング」と呼ばれる不思議な力を持つ息子のダニーも、ホテル内の不穏な空気を感じ始めます。
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音楽を抑えた演出は、映像で不気味さや怖さを見せて観客をくぎ付けにします。映像表現に定評のあるキューブリックの手腕が光る作品。主役を演じるニコルソンの狂気的で激しい演技も、静かなホテルの怪奇現象と対照的で観る者の恐怖心をあおります。俳優ジャック・ニコルソンを語るには外せない名作です。
ちなみに、ニコルソンが斧でドアを壊すシーンで「Here's Johnny!」と言うのはアドリブ。これは当時アメリカの人気番組「The Tonight Show」の冒頭で呼ばれる有名なセリフで、キューブリックからアドリブを指示されたニコルソンのアイデアでした。
名優ジャック・ニコルソンおすすめ作品5:『チャイナタウン』
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