けれども、青年は帰宅を言い出します。帰ってほしくないジェフリーはダンベルを使って彼を昏倒させ、首を絞めて殺害しました。その後、彼の衣服を脱がせて屍姦し、ナイフで腹部を裂いて血を浴び、バラバラに解体しました。これがジェフリーのはじめての殺人でしたが、これは衝動的なものであって、ジェフリーにとってもトラウマとなる事件だったのです。
その後、自らが同性愛者であることに気づいたジェフリーはゲイバーに通いますが、そこで気に入った青年に声をかけ、睡眠薬を混ぜた飲みもので眠らせて殺害し、死体をバラバラにするという事件を繰り返します。
「ウエストワールド」 -(C)2016 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.
逮捕されたときに住んでいたアパートの一室にはバラバラ死体の写真と、冷蔵庫にいっぱいの肉片や内臓、大きなポリ容器などが発見されました。ポリ容器は容量260リットルの大きなもので、中には酸で溶かされた人間の胴体が3人分入っていました。
ロバート・K・レスラーはFBIを退職してから、ジェフリーと対面しています。レスラーが彼から聞いたところによると、彼はいつも相手とは深く知り合わないようにしていました。そうすることで相手の人格を認めずに済んでいたが、いつも罪悪感があったのだと述べています。レスラーは彼について、精神障害があるので刑務所に入れるよりも精神科に入院させる方が必要だと判断しました。
『ヒッチコック』ロンドン・プレミア(左からヘレン・ミレン&アンソニー・ホプキンス)
■ヘンリー・リー・ルーカス
ハンニバル・ライジング
ヘンリー・リー・ルーカスは1936年、アメリカに生まれました。最も有名なシリアルキラーの1人で、全米17州に渡って300人以上を殺害したと言われています。しかしながら、罪として確定しているのは11人で、実際のところはヘンリーが没してしまった現在ではわからなくなってしまいました。
ヘンリーは幼い頃から両親に虐待されていました。殊に母親が残虐と言っていいほどで、機嫌が悪いと殴打し、言葉でなじりました。娼婦であった母はときには客から特別料金を取って、ヘンリーの目の前で行為に及ぶこともありました。母はヘンリーが生まれたことをよろこんではおらず、特に男児であったことを残念がりました。女児なら一緒に客を取って稼ぐこともできたからです。
『地獄愛』(C)Panique / Radar Films / Savage Film / Versus Production / One Eyed - 2014
ヘンリーが最後に逮捕されたときに行われた精密検査によると、脳の神経系が広い範囲で損傷していました。逮捕時のヘンリーは47歳。この年令まで修復されない損傷が残っていたということは、母の虐待はよほど手ひどかったのです。とにかく母の機嫌を損ねては無事ではいられない、というので、ヘンリーは「相手の気に入る答えをとっさに探してうそをつく」という能力を身につけてしまうのでした。
14歳のとき、父が亡くなります。それをきっかけに、ヘンリーは交流があった腹違いの兄を頼って海軍に志願しました。軍に入れば母からも逃れられます。しかし、彼は幼い頃に怪我を負って左目が義眼になっており、それを理由に入隊拒否されてしまいます。戻ってきたヘンリーに母が呪いの言葉をかけます。
「お前に行く場所などあるものか。お前は死ぬまで私の奴隷だ」
『十二人の死にたい子どもたち』(C)2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会
ヘンリーはその後犯罪を繰り返すようになりますが、最初に逮捕された罪状は窃盗でした。23歳で出所した後は義姉を頼って身を寄せましたが、そこでマリーという女性と出会います。はじめて真面目に働こうとヘンリーは決意しますが、そこに母が現れて悪罵を投げかけた上で彼を連れ帰ろうとします。ヘンリーは抵抗しますが、マリーの方が母の悪罵に耐えられなくなり、家を飛び出してしまいました。
なおも母はヘンリーを罵倒し、殴りかかろうとします。とっさにヘンリーの手はナイフを取り、母の喉を切り裂きました。しかし、母が死んだとは信じられず、ヘンリーは車を盗んで遠くへと逃亡します。
『ヒッチコック』 -(C) 2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
母の影に怯えながら州越えをしようとしたところで逮捕されてしまいましたが、実はこれがヘンリーの最初の殺人ではありませんでした。最初の殺人は14歳のときで、これは最後の逮捕の後、自供するまで明るみに出ませんでした。
収監された後も母の影響は残り、ヘンリーは母の声が自殺を強いてくる幻聴に悩まされ続けました。収監から10年で仮釈放されることになりましたが、ヘンリー自身は「釈放されたら私は間違いなく人を殺す」と明言して釈放を拒んでいました。はたして、刑務所を出たヘンリーはその足で数メートル歩いた先で女性を絞殺、強盗を働き、再度収監されます。
© 2015 TORNASOL FILMS, S.A. – ATRESMEDIA CINE, S.L. – HERNANDEZ & FERNANDEZ PC, S.L. – MISTERY PRODUCCIONES A.I.E
出所後、ヘンリーはオーティス・トゥールという男と出会います。トゥールもまた連続殺人者で、人肉食を好みました。意気投合した彼らはドライブに出掛けては殺人を繰り返し、死体の肉を食べるということを繰り返します。ヘンリーは「殺人は息をするのと同じだった」と述べています。
1983年の逮捕が「最後の逮捕」となりますが、この後、ヘンリーは「神の声」を聞きます。「すべての罪を告白するように」という声です。これによりヘンリーの自供がはじまり、最初の殺人も明らかになりました。しかし、幼い頃に身についてしまった虚言癖のためにどこまでが真実なのかわかりません。
マッツ・ミケルセン主演『悪党に粛清を』 (C)2014 Zentropa Entertainments33 ApS, Denmark, Black Creek Films Limited, United Kingdom & Spier Productions (PTY), Limited, South Africa
ヘンリーが関わった事件の捜査は困難を極めます。「ヘンリー・ルーカス連続殺人事件特別捜査班」が設立され、ヘンリー自身もその一員となりました。刑務所の厳重警戒房の中で、捜査に協力するのです。原作小説を書いたトマス・ハリスは明言していませんが、この辺りが『羊たちの沈黙』のレクター博士の設定に活かされているようです。
ヘンリーは死刑が確定して、執行を待ちながら捜査協力していましたが、執行されるより早く心臓発作で没しました。2001年のことでした。
ギャスパー・ウリエル『たかが世界の終わり』
■アルバート・フィッシュ
ハンニバル・ライジング
アルバート・ハミルトン・フィッシュは1900年代の前半に多くの子供を殺害したアメリカのシリアルキラーです。「ブルックリンの吸血鬼」、あるいは、満月の日の犯行が多かったため「満月の狂人」と呼ばれました。アメリカ犯罪史上最悪の殺人鬼とされています。
アルバートは父が75歳のときの子でした。母は父よりも43歳年少でしたが、幻覚を見る精神疾患を持っていました。5歳の時に父が亡くなり、アルバートは孤児院に預けられることになりました。そこはしつけが厳しいところで、教鞭で叩く指導をしていました。アルバートも何度も鞭で尻を叩かれています。
『グリーン・インフェルノ』 (c)2013 Worldview Entertainment Capital LLC & Dragonfly EntertainmentInc.
この鞭による罰はアルバートにSMの嗜好をもたらしました。痛みを与えられることに快感と興奮を覚えるようになったのです。28歳のときに結婚して6人の子供を設けたアルバートは子供らに暴力を振るうこともなく、子供らは普通に育ちましたが「ときどき父は自分を釘がたくさん突き出た板で叩くように頼んできた」という証言が残っています。
のちにアルバートは離婚することになりますが、その後も遊びに来た子供に鋲がついた板で自分の尻を叩くように頼んでいます。彼は殴打されるたびによろこび興奮し、絶頂に達するさまを子供らに見せました。著名な精神科医によると、彼には強いサディズムとマゾヒズムが同時に内在していました。
© 2011 amumo 98 All Rights Reserved.
アルバートは自分の身体に自分で針を刺して快楽を得ていたと報じられています。刺してすぐに引き抜くようにしていましたが、深く刺すほど強い快感が得られるので抜けなくなるほど深く刺すようになっていき、身体の中に残った針は29本もあったと伝えられています。
離婚後、全米中を放浪した彼はたびたび殺人を犯しました。殺害するだけでなく死体を食し、そればかりか血液や糞尿まで食べたと言います。また、子供の肉を好み、調理しやすいように子供を縛って拷問していました。釘を打ちつけたベルトで身体を叩き、肉をやわらかくしていたのです。ときには食べるために子供をさらい、殺害することもありました。
『善き人に悪魔は訪れる』 -(C)2014 Screen Gems, Inc. All Rights Reserved.
ある10歳の少女を誘拐する際には、アルバートは両親と仲よくなって信頼を得てから、少女をパーティに連れて行くと言って連れ出しました。そしてやはり少女を食べてしまうのですが、その後、少女の両親あてに少女をどのようにして殺害し、どんな風に調理して食したかと「美味だった」と記した手紙を送っています。この手紙を両親が警察に届けたことによってアルバートは逮捕されました。
1936年、アルバートは電気椅子による死刑で刑死しました。刑の間際にも彼は「生涯一度の最高のスリルだ」と述べたという風に伝えられています。
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■テッド・バンディ
『ハンニバル・ライジング』