精神障害・メンタルをテーマにした映画 ①『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』(統合失調症)
ⓒ Les Films du Lendemain / Shanna Besson
映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』は2007年公開、フランスの伝記ドラマ。
近代彫刻の父オーギュスト・ロダンの半生を、才能ある愛弟子で愛人のカミーユ・クローデルとの愛の苦悩を織り交ぜて描いた物語です。
監督はポスト・ヌーヴェルバーグ、『シャルロット・ゲンズブール/愛されすぎて』などでお馴染みのフランス出身監督ジャック・ドワイヨン。
ⓒ Les Films du Lendemain / Shanna Besson
カミーユ・クローデル(イジア・イジュラン)は激しく情熱的で才能溢れる女性ですが、それだけに狂気と紙一重です。
一方、ロダン(ヴァンサン・ランドン)は優柔不断で女好き、才能あるダメ男。
だからローズを愛しながらもモデルたちとも関係を持ちますし、カミーユと情熱的な恋に落ちる破天荒っぷりで周囲を不幸にしてしまいます。
カミーユは彫刻家として悩み、先の見えないロダンとの愛に苦悩。挙句の果てに破局して40歳の時に統合失調症を発症して精神病棟に放り込まれました。
一生をそこで過ごしたそうです。
ⓒ Les Films du Lendemain / Shanna Besson
ダメ男はいつの時代もモテるし特殊な魅力がありますが、殆どは無意識に女性を不幸にします。
同じ才能を持ちながら、ロダンは40歳で成功し、カミーユは40歳で大きな心の病を抱え込みました。
でも、カミーユは心のどこかでこの顛末を予測出来ていたと感じます。
仕事の成功や女性としての幸せと引き換えにしてまで、みなぎる情熱をロダンに捧げドラマチックな恋に燃え尽きる事を選んだ強い女性なのでしょう。
手繰り寄せた運命に逆らわないのも、強い覚悟と勇気が必要です。
「統合失調症」が起こる原因はハッキリとしていませんが、本人の持つ気質・遺伝子と過度のストレスが合わさる事によって発症するのではないかと言われています。
「幻覚」と「妄想」も伴うようなので厄介です。
カミーユが持つ繊細な感受性と激しい気性、そこに愛の破綻という大きなショックが重なって発症したのかもしれません。。
幸せの価値観も様々ですが、悔いのない選択をして時には立ち止まり自分に優しくする時間も取り入れていきたいですね。
精神障害・メンタルをテーマにした映画 ②『路上のソリスト』(統合失調症)
© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
映画『路上のソリスト』は2009年公開、アメリカの音楽ドラマ。
LAタイムズに実在する人気コラムニスト、スティーヴ・ロペスが人生につまづいていた時期、偶然出会ったホームレスの音楽家、ナサニエル・エアーズに魅せられたことによって紡がれていく友情を描いた実話です。
監督は『アンナ・カレーニナ』『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』のイギリス人監督ジョー・ライト。
ナサニエルをジェイミー・フォックスが、スティーヴ・ロペスをロバート・ダウニー・Jr.が演じています。
© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
ナサニエルは幼少期から天才的な音楽の才能があって、チェロとバイオリンに加え、ベース、ピアノ、ギター、トランペット、ホルン、ドラム、ハーモニカなどをこなすことが出来、ジュリアード音楽院にも在籍していたチェロ奏者でした。
しかしながら、統合失調症を発症したのが原因で退学。
次第に家族とも疎遠になり、ゴミのようなものを大切に積んだカートを転がしながらホームレス生活を送る路上音楽家として生きていました。
そこに人生につまづいたコラムニスト、スティーヴが居合わせ、彼が2弦で奏でるバイオリンの音色に魅了されてしまいます。
© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
そこから統合失調症の音楽家とコラムニストによる人生再生ドラマが、もどかしくも感動的に繰り広げられていきます。
優しくて才能溢れるナサニエルを、どうにか社会に適合させて成功へ導こうとするスティーヴですが、ナサニエルは肝心なところでおかしくなってしまう...。
感受性豊かで人並外れた才能を持った人間に起こりやすい「統合失調症」。
物語が進行するにつれ、成功って何だろう?と考えてしまう。
ナサニエルは壮大な才能を持ち、ゴミのように小さな家を転がしながら時々佇んで音楽を楽しみ人生を謳歌しています。
多きなホールを満員にして、形式的に奏でるのではなく、こんな生活を送るのが彼にとって純粋に極上の幸せなのかもしれません。
ナサニエルを救おうとする行為は、これまで社会に適合して生きてきたスティーヴの悪意が無いエゴだったのかもしれません。
実際、人生につまづいたスティーヴを救ったのは、病と共存して生きるナサニエルが奏でた音でしたし、その音に救われている人も沢山いるのです。
精神障害・メンタルをテーマにした映画 ③『世界にひとつのプレイブック』(躁うつ病<双極性障害>)
『世界にひとつのプレイブック』 -(C) 2012 SLPTWC Films, LLC. All Rights Reserved.
映画『世界にひとつのプレイブック』は2012年公開、アメリカのヒューマン・ラブ・コメディ。
躁うつ病(双極性障害)持ちの男パットが、夫を亡くして性依存症を患ったエキセントリックな女性ティファニーと出会って "ある約束" のもと協力し合う中で、徐々に見つけていくお互いの現実と新しい希望や喜びをコミカルに描いた感動のヒューマン・ドラマ。
監督は『アメリカン・ハッスル』のデヴィッド・O・ラッセル。
『世界にひとつのプレイブック』 -(C) 2012 SLPTWC Films,LLC. All Rights Reserved.
パットを演じるのはブラッドリー・クーパー。
躁うつ病持ちのパットは美人の妻と夫婦共に教師をしていたが、ある日偶然家のシャワー室で妻の浮気現場に遭遇。
男をボッコボコにして精神病院送りになります。
母親の一存で無理から病院を退院させられた彼は、接近禁止令が出ているにも関わらずまだ妻との間に強い愛があると信じ込んでスリムになる為のジョギングに憑りつかれています(ゴミ袋に袖穴を明けた、変なサウナスーツ着用)。
『世界にひとつのプレイブック』 -(C) 2012 SLPTWC Films,LLC. All Rights Reserved.
性依存症の未亡人ティファニーを演じるのはジェニファー・ローレンス。
彼女はいつも真っ黒な服に真っ黒なネイルを塗り、真っ黒なアイラインを強めに引き、突拍子もない言動で周囲をザワつかせるもののゾクッとするような魅力を放っています。
"自分と違って何でも手に入れる人生の成功者" である姉の夕食に招かれて、場違いな服装で夕食会に参加したしたパットと遭遇します。
そこから2人はぎこちなく "ある約束" に向かって協力し合い、お互い病気のせいで自分しか見えないが故に深く傷つけあいながらも、真実や愛を見つけていく事になります。
『世界にひとつのプレイブック』 -(C) 2012 SLPTWC Films,LLC. All Rights Reserved.
躁うつ病を患う原因と見られるのは父親シニア(ロバート・デ・ニーロ)との関係性です。
家の全財産を "掛け" につぎ込んだり、過去には暴力事件を起こしていたりと問題児で、家では独善的で家族全員を変な権力で振り回す傾向があり、ジンクスを重んじる父シニア。
彼の行動には "躁うつ病" らしき描写が沢山あって、それをパットが遺伝的・精神的に受け継いだ形のようです。
ただ、この家族全員がとても暖かい心を持っていることに救われます。
『世界にひとつのプレイブック』 -(C) 2012 SLPTWC Films, LLC. All Rights Reserved.
始めは適切な処方薬を拒否していたパットですが、ちゃんと適量を飲み、ティファニーの真心に応えて自分自身と戦い、心身共に成長していきます。
最後のダンスシーンで、ティファニーが黒いコートを脱ぎ棄てて真っ白な衣装で踊るシーンは彼女の魅力が凝縮していて素晴らしい!
"辛抱強く待つ女" の美しさと愛が弾けています。
一生懸命に自分の人生を生きる勇気が湧いてきて感動してしまいます。
とても複雑な "表情の演技" に圧倒されました。
精神障害・メンタルをテーマにした映画 ④『サムサッカー』(ADHD<注意欠陥多動性障害>)
『サムサッカー』メイン
映画『サムサッカー』は2006年公開、アメリカの青春ドラマ。
親指を吸う癖(サムサッキング)が止められない17歳の少年の心の成長を、彼を取り巻く人々との交流を通して優しく描いたヒューマン・ドラマです。
監督はグラフィック・デザインやミュージック・クリップ等のクリエイティビティで有名なアーティスト、マイク・ミルズ。
『サムサッカー』サブ2
内向的でちょっぴりオタクな少年ジャスティン(ルー・テイラー・プッチ)は、多感な17歳。
いい年して親指をしゃぶるクセ(サムサッキング)が抜けなくて困っています。
心配した行きつけの歯医者の歯科医ペリー先生(キアヌ・リーブス)に催眠術を掛けてもらい治ったはいいものの、しゃぶれないストレスで挙動不審になりADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されて抗うつ剤を処方されるが...。