園子温監督によるNetflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』ネタバレ解説・考察

『愛のむき出し』『ヒミズ』で日本のみならず世界各国から注目を集めた名監督・園子温がメガホンを取った最新作『愛なき森で叫べ』。2019年の10月、動画配信サービス「NETFLIX」のオリジナルムービーとして世界各国で配信されました。主演は、『アウトレイジ』でおなじみの椎名桔平。

園子温監督作品おなじみのエロティックかつ暴力的な描写に加え、予測不能な展開と、随所にちりばめられた”謎”が話題を呼んでいます。スリラー映画ともバイオレンス映画ともいえる、様々な要素で構成された、唯一無二の作品です。

言葉巧みに人の心を操る詐欺師・村田丈（椎名桔平）に翻弄される周囲の人々の恐怖を描いた本作。地上波ではとても放送できないような過激なシーンが数々登場し、「問題作」ともいわれています。しかし、そんな文言だからこそ見てしまいたくなるというのが、映画ファンの心理でしょう。それでは、『愛なき森で叫べ』のネタバレあらすじを詳しく解説します。かなりショッキングな内容となるため、閲覧注意ですよ！

ある日の東京。テレビでは、森で女性が銃殺されるという猟奇殺人事件のニュースが報道されています。名古屋から上京してきた青年・シン（満島真之介）が路上で歌っていると、映画監督を志すジェイ（YOUNG DAIS）とフカミ（長谷川大）と出会い、意気投合します。彼らは映画祭でグランプリを取るために、自主製作映画の作ろうと計画していました。なりゆきで、シンは映画製作にたずさわることに。

シンはジェイとフカミが住んでいるという倉庫へ行くと、そこで2人に女性経験がないことを見抜かれてしまいます。2人はシンに「いい女性を紹介する」と言い、パンクなファッションに身を包む女性・妙子（日南響子）の家へと連れて行きます。その後、妙子は同級生で、現在引きこもり中の美津子（鎌滝えり）をシンたちに紹介しました。

ここで、妙子と美津子の過去の話になります。2人は同じ女性校の演劇部員で、当時2人とも美人の女子生徒エイコ（川村那月）に好意を抱いていました。ある日、演劇で「ロミオとジュリエット」を発表することになった妙子たち。

ロミオ役のエイコにキスをされた美津子は、恋に落ちてしまいますが、エイコは自動車事故に巻き込まれ、帰らぬ人になってしまいます。あまりのショックに、妙子と美津子はほかの女子生徒とともに自殺未遂をしますが、2人だけが生き残りました。妙子は足が不自由になり、美津子は男性との接触もなく、引きこもり生活を送ることになってしまったのです。

ロミオ姿のエイコの幻に悩まされる美津子の元を訪れた妙子とシンたち。しかし、過去の痛みから逃れられない美津子は妙子たちを追い返してしまいます。そんな日の夜、苦悩する美津子にある1本の電話がかかってきました。電話の主は村田丈（椎名桔平）という男で、電話の内容は「昔借りていた50円を返したい」というもの。美津子は村田の巧みな言葉遣いに惑わされ、彼と会うことに。

村田は高そうな車でやって来ました。品の良いスーツを身にまとい、指輪のケースに入った50円玉を美津子に渡し、優しく微笑みかけます。美津子はすぐさま心を奪われてしまいました。

美津子と村田の幸せそうな様子を撮影していたシンたち。彼らは自主映画のネタとして使うつもりでした。しかし、シンたちに同行していた妙子の顔が曇っています。妙子は村田を見るなり、美津子に向かって「村田は危険だ」と言い放ちました。

実は、村田は妙子の姉の元婚約者だったのです。しかし、姉と婚約している身でありながら妙子とも男女の仲となり、それだけでなく妙子の母にも迫っていたという、危険な男性でした。村田は金目当てで妙子の家庭に近づきましたが、一家にお金がないことを知ると、姿を消したといいます。

美津子は村田に心底ほれ込んでおり、妙子の必死の説得に耳を貸しません。その後、村田からプロポーズを受けた美津子。しかし、妙子が美津子を村田から遠ざけるために、自分が村田の女であることを電話で告げます。動揺した美津子は自殺未遂をしますが、一命をとりとめます。一方村田は美津子の病院に付き添いでやって来たアミ（中屋柚香）と仲睦まじい様子。

その後、シンや妙子たちは村田が主催するライブに誘われます。ライブに足を運んでみると、そこには美津子もいました。妙子は美津子に近づきますが、美津子は妙子に敵意をむき出しにして拒絶します。

ライブでの演奏が始まりますが、見回してみると、ライブの観客は女性ばかり。そう、シンたちを除くほとんどの客は、村田に心を奪われた女性たちだったのです。この異様な光景と、堂々とステージに立つ村田を見て、シンとジェイは彼を映画にすることを改めて決意します。

美津子の体に傷があることを知ったシンたちは、「連続銃殺事件の犯人は村田ではないか」と疑います。美津子に村田の本性を見せ、救い出すためにも映画製作を続けるシンたち。しかし、村田はシンたちに接近し、彼らの信頼を得て、本人役で映画に出演することに。

村田に心を奪われたシンたちは、彼とともに信用金庫へ行き、映画製作費用を借りようとします。しかし、お金の借用を断られた村田が銀行内で暴れたことで、シンたち6人は指名手配される身となるのでした。