『新聞記者』は社会派サスペンスフィクション
©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
『新聞記者』は、2019年6月に全国で公開、2019年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門を受賞し、受賞後の凱旋上映も合わせ、累計興行収入が6億円を超え大ヒットしました。
現役の東京新聞記者・望月衣塑子(もちづき いそこ)作のフィクション「新聞記者」を原案にした本作は、“報道メディアは権力にどう対峙するのか”を問いかけ、公開とともに満席が続いた話題の社会派サスペンスフィクション。
あくまでもフィクションとしながらも、現在の日本で進行中の問題、首相の友人が絡んだ医療系大学の新設にまつわる公文書や、政権維持が名目のSNSを使った情報操作、上からの圧力で及び腰な大手メディアの報道姿勢などが描かれており衝撃的です。
打ち切りの噂は嘘!サイバー攻撃も?!
『新聞記者』舞台挨拶
『新聞記者』は公開後「打ち切りになった」「打ち切りになるのでは」という噂が流れましたが、順調に観客動員数を重ね、公開から1か月弱で累計33万人もの人々が本作を鑑賞しました。
こういった噂は、まさに劇中に描かれているように、「政権批判」「政治とマスコミの暴かれたくない関係」を見せないために、政府側の手により「マスコミとSNSによる情報操作」がされていたとも考えられます。
また公式サイトが断続的にサーバーダウンする状況も発生し、特定のIPアドレスからの集中アクセスによるサイバー攻撃の疑いも持たれました。
『新聞記者』の評価は?
最優秀作品賞/『新聞記者』(C)日本アカデミー賞協会
主人公のキャスティングが難しかったほど、政権をめぐる問題提起がリアルな社会派フィクションとしては意外な大ヒットとなった『新聞記者』。
映画ファンのみならず、一般客、芸能人からの評価もとても高く、日本アカデミー賞では6部門を受賞しました。
■日本アカデミー賞を総ナメ!
最優秀主演女優賞/シム・ウンギョン(C)日本アカデミー賞協会
『新聞記者』第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞し、W主演をつとめたシム・ウンギョンと松坂桃李が、そろって男女の最優秀主演賞を受賞。
さらに藤井道人監督が優秀監督賞を、優秀脚本賞、優秀編集賞も受賞し、6部門総なめの歴史的快挙を遂げました。
「一緒に共演できて本当に光栄でした、松坂桃李さん。本当に本当にありがとうございました。これからも頑張って活動します」と授賞式でスピーチをした、主演のシム・ウンギョンの涙と、心のこもった言葉が印象的です。
■観た人の感想や反響
最優秀主演男優賞/松坂桃李(C)日本アカデミー賞協会
映画レビューサイトの公開一週間後の映画レビュアー満足度は90%を超えました。
観客の感想は「タイムリーな時事ネタから、SNSを使った情報操作まで、リアルな背景があった。政府機関の闇にメスを入れるような重々しさもあり、見応えある展開だ」「『新聞記者』ここ数年観た邦画の中でも間違いなくずば抜けている」など、社会派のテーマ作品を高く評価!
「主演の2人のどちらにも魅力があってシム・ウンギョンの慟哭するシーン、松坂桃李の最後の精神が崩壊したような表情がそれぞれ凄まじかった。」「全体的に感情を抑えているにもかかわらず、存在感が二人とも半端ない。」など、主演のふたりの抑えた演技ですべてを表現し尽くす演技力は観るものを圧倒します。
『新聞記者』の監督は藤井直人
藤井道人(監督)
『新聞記者』で藤井道人監督は日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。
藤井道人監督は日芸大学映画学科に在学中から脚本や短編の監督をつとめ、伊坂幸太郎原作の映画『オー!ファーザー』で長編映画デビューを果たしました。
代表作は『幻肢』『青の帰り道』『デイ アンド ナイト』など多数、2020年以降は『宇宙でいちばんあかるい屋根』『ヤクザと家族 The Family』の公開が予定されています。
『新聞記者』の原作は?実話?
原作は東京新聞の社会部記者、望月衣塑子(もちづき いそこ)のノンフィクション「新聞記者」で、累計発行部数10万部を超えるベストセラーとなりました。
官房長官への記者会見で「質問する記者」として有名になった新聞記者、望月衣塑子がこれまでの自分がしてきたことを振り返りつつ、「記者の仕事とは何か」を自問していくノンフィクション作品。
原案、原作がノンフィクションであることから、映画の中で描かれていることはほぼ実話ともいえます。
■原案の望月衣塑子は劇中対談にも出演
『新聞記者』の原案を作成した東京新聞の記者、望月衣塑子が、劇中で主人公の吉岡が家で観ているネット座談会に、文部科学省の元トップ前川喜平、ニューヨーク・タイムズ元東京支局長のマーティン・ファクラーとで出演。
劇中の社会で起こっている問題点を座談会の形式で、さりげなく説明、提言しています。
この劇中座談会をきっかけに、望月衣塑子、前川喜平、マーティン・ファクラーの3人は、日本を覆う同調圧力をテーマに親書「同調圧力」を書き下ろしました。
『新聞記者』の登場人物解説
『新聞記者』 (C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ
大手新聞社の記者と、日々指示される情報操作に疑問を抱く内閣情報調査室の官僚。
その家族、自殺した元上司、内調の上司が「医療系大学新設計画」をめぐって、リーク、スクープ、圧力、妨害を繰り広げます。
■主人公の新聞記者・吉岡エリカ
『新聞記者』 (C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ