あらすじ
『ヒトラーへの285枚の葉書』ポスター (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
第二次世界大戦中の1940年、ナチス政権下のドイツに暮らすオットーとアンナのクヴァンゲル夫妻のもとに、最愛の一人息子ハンスが戦死したとの知らせが届く。悲しみにくれる中、おもむろにペンをとったオットーは、「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう。」と怒りのメッセージを葉書に記し、それをこっそり街中に置いてきた。
その後もオットーは、ナチスとヒトラーを弾劾する内容の葉書を書いては、公共施設に放置するというささやかなレジスタンス行為を繰り返していた。はじめは冷ややかな目で見ていたアンナも、徐々に協力するようになる。しかし、ゲシュタポの捜査の手は確実に二人に迫っていた。
原作は実話をもとにしたベストセラー「ベルリンに一人死す」
『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
原作は20世紀前半にドイツで活躍した作家、ハンス・ファラダのベストセラー「ベルリンに一人死す」です。彼は第二次世界大戦後、ゲシュタポの捜査記録をもとにこの作品の執筆をはじめました。ファラダ自身、戦時中はナチス・ドイツに目をつけられており、自分の思うような創作活動ができずにいました。それゆえ、物語の主人公となったクヴァンゲル夫妻の行動にいろいろと思うところがあったのでしょう。600ページにものぼるこの作品を、わずか2ヶ月ほどで書き上げてしまいます。そしてその数ヶ月後に、ファラダは長年の薬物摂取などが原因でこの世を去りました。
ドイツでは知名度も高く、人気作家の一人ですが、国外に名が知れわてるようになったのは21世紀になってからでした。「ベルリンに一人死す」も英訳完全版が出版されたのは2010年とわずか7年前のことです。
映画版とは設定が異なる箇所も少しあるので、気になる方は読んでみてはいかがでしょうか?
監督は俳優としても有名なヴァンサン・ペレーズ
ブレンダン・グリーソン&監督/『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
監督そして脚本を手掛けるのは、『王妃マルゴ』『インドシナ』などで俳優として有名なヴァンサン・ペレーズです。最近は監督・脚本も手掛けており、彼にとって今作は3作目の監督作品になります。
この映画を撮るきっかけとして、彼は先祖のことを語っています。スペイン人の父とドイツ人の母をもつペレーズ監督の先祖も、多くは第二次世界大戦に巻き込まれて亡くなったそうです。しかしフランス人として生きてきた彼がナチス・ドイツ時代を描いた映画を撮るというのは予想以上に難しく、構想から8年を経てようやく公開にいたりました。
妻のアンナ役はエマ・トンプソン
エマ・トンプソン(「メリー・ポピンズ」原作者P.L.トラヴァース役)/『ウォルト・ディズニーの約束』 - (c)2013 Disney Enterprises, Inc.
妻のアンナを演じるのは『ハワーズ・エンド』『いつか晴れた日に』で二度のオスカーを手にし、『ハリー・ポッター』シリーズのトレローニ教授でもおなじみのエマ・トンプソンです。
彼女はアンナについて、自身と比較し「私は高等教育を受けることができ、知識を得ることで自信を持つことができたが、恵まれない境遇で狭い世界で生きてきたアンナが生きる目的をみつけ、自発的になっていくことが素晴らしい」と語っています。この役に並々ならぬ情熱を注いでいるようなので、彼女の演技が楽しみです。
夫のオットー役はブレンダン・グリーソン
エマ・トンプソン&ブレンダン・グリーソン&監督/『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
夫のオットーを演じるのは、『未来を花束にして』のほか、エマ・トンプソンと同じく『ハリー・ポッター』シリーズのマッドアイ・ムーディ教授を演じたブレンダン・グリーソンです。彼は今作でエマ・トンプソンと共演できることをとても喜び、この映画について、「息子の死で打撃を受けて消えかけた夫婦の愛情が再び燃え上がる美しい物語」と分析しています。
夫婦を追い詰める警部役にはダニエル・ブリュール
ふたりを追い詰めるゲシュタポのエッシェリヒ警部を演じるのは、『グッバイ・レーニン!』で一躍有名になり、最近では『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にも出演し国際的な活躍をみせるダニエル・ブリュールです。
彼は、自分が演じたエッシェリヒ警部について「ナチスの賛同者ではなかったが、事件解決が難航し、圧力をかけられ恐怖心から自分の信念や価値観を捨て去ってしまう。彼の存在は当時のドイツの典型的な市民の姿だ」と語っています。
手に汗にぎる緊迫の攻防劇
『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
ヴァンサン・ペレーズ監督&ダニエル・ブリュール『ヒトラーへの285枚の葉書』メイキング (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
ヒトラーやナチス政権への抵抗が死を意味するこの時代。クヴァンゲル夫婦の活動はとてもささやかなものでしたが、それでも命がけの行動でした。彼らを追い詰めるゲシュタポとのかけひきがまさに手に汗握る展開で、ハラハラすること間違いなしです。
夫婦の絆を再確認。お互いへの愛と思いやりに感動!
『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
息子の死をきっかけに、ナチス政権への疑問を抱きはじめたクヴァンゲル夫妻。レジスタンス活動を続ける中で、お互いへの愛情や思いやりを再確認し絆を深めていきます。戦争という負のできごとがなければ分からなかったことかもしれないと思うと少しやるせないですが、我々現代人にとっても通じるところはあると思うので、要チェックです!
まとめ
『ヒトラーへの285枚の葉書』 (C) X Filme Creative Pool GmbH / Master Movies / Alone in Berlin Ltd / Pathe Production / Buffalo Films 2016
戦争が生む怒りや悲しみはもちろん、夫婦の愛や人々の苦悩、葛藤など、さまざまなことを感じられる映画になっています。ぜひ劇場でお楽しみください!